電話の向こうにいる家族は、
いつも質問を用意しているわけではありません。
何を聞けばいいのか分からないまま、
とりあえず電話をかけてきていることもあります。
声に出してみて、
初めて自分が何に不安を感じているのかに気づく。
そんな始まり方も、珍しくありません。
「それはまだ決まっていなくて」
「確認してからになります」
正しい答えを返そうとすると、
どうしても言葉は短くなります。
間違ってはいません。
むしろ、仕事としては正しい対応です。
それでも、
電話を切ったあとに残る感覚が、
少し違うことがあります。
家族が求めているのは、
必ずしも結論ではありません。
今すぐの判断でも、
正確な情報でもない。
ただ、
話を途中で遮られなかったこと。
急がされなかったこと。
言葉にならない部分を、
そのまま置いてもよかったこと。
「ちゃんと聞いてもらえた」
という感覚が、
一度その場に残るだけで、
次の会話は少し変わります。
一次対応の役割は、
答えることではない場面もあります。
整理されていない話を、
そのまま受け取ること。
整えずに、持ち帰ること。
誰がそれを担うのか。
現場の人がいいのか、
別の立場の人がいいのか。
それは、施設ごとに違います。
ただ、
正しい答えが出せるかどうかと、
受け止められたと感じてもらえるかどうかは、
同じではありません。
その違いに、
気づく瞬間があるかどうか。
それだけのことかもしれません。